「第57回Q-LEAP量子AIセミナー」のお知らせです。
今回は、東京大学の水田 郁さんによる、時間周期系の固有値問題に関する量子アルゴリズムについてオンラインセミナーを行います。
参加を希望される方は下記の参加登録フォームよりご登録をお願いします。
- 日時: 2024年2月20日(火) 13:00~14:00
- 場所: オンライン(ZOOM)
- 講演タイトル: 時間周期系に対する準最適な擬エネルギー固有値・固有状態計算
- 講師: 水田 郁 氏(東京大学大学院 工学系研究科 助教)
概要:
エネルギー固有値・固有状態の計算は量子多体物理において最も基本的かつ重要なタスクの一つである。量子計算は古典計算よりも高速かつ精度よくそのタスクを実行できると期待されており、量子位相推定アルゴリズムが最も有名な例である。量子位相推定は、時間依存しないハミルトニアンに対して、目的の固有状態と大きい重なりを持つ初期状態が与えられた時、その固有値を精度保証つきで与え尚且つ測定後にその固有状態を実現することができる。その計算コストは要求精度に関して最善であることが知られ、将来的に基底状態・励起状態計算など物性物理・量子化学への応用が期待されて精力的に研究されている。
我々は、その問題を拡張した時間依存系とりわけ時間周期的に駆動される系(時間周期系)におけるエネルギー固有値・固有状態計算の問題に着目した[1]。時間周期系は光を照射した物質など広範な系を含み、その固有値・固有状態は多体局在,時間結晶など様々な非平衡現象の解析で中心となる計算対象である。時間周期系では計算に必要な補助空間が無限次元となる、等価な固有状態の定義が複数存在するなどの時間依存性に由来する困難さがある。我々は Floquet 理論や量子特異値変換などでそれを解決した量子アルゴリズムを構成し、時間周期系のエネルギー固有値・固有状態の計算コストが時間非依存系に対する理論限界に近いものであることを示した。本講演では、時間周期系における固有値・固有状態計算のアルゴリズムを、導出・コスト・応用などの観点から議論する。
[1] KM, arXiv:2401.02700 (2024)
本セミナーシリーズは量子AIやその周辺分野に関する最近の研究内容などを共有するために企画した、オープンなセミナーです。
皆さまのご参加をお待ちしています。