「第80回Q-LEAP量子AIセミナー」のお知らせです。
今回は、東京大学の山崎隼汰 氏によるオンラインセミナーを行います。
参加を希望される方は下記の参加登録フォームよりご登録をお願いします。
- 日時: 2025年8月5日(火) 16:00~17:00
- 場所: オンライン(ZOOM)
- 講演タイトル: 量子LDPC符号に基づく定数空間オーバーヘッド・対数多項式的時間オーバーヘッド誤り耐性量子計算
- 講演者: 山崎隼汰 氏(東京大学 大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻・東大 理学部 情報学科 准教授)
概要:
誤り耐性量子計算(fault-tolerant quantum computation; FTQC)における重要な課題の1つは、空間オーバーヘッド(1論理量子ビットあたりに必要な物理量子ビット数)および時間オーバーヘッド(1論理ゲートあたりに必要な物理ゲート列の長さ)を削減することです。これまでにも、表面符号を用いたものなど様々なFTQCプロトコルが提案されてきましたが、従来手法では空間・時間の両方で対数多項式的(polylog)に大きなオーバーヘッドが必要になるという問題がありました。物理量子ビット数のオーバーヘッドを減らすために、近年では空間オーバーヘッドを定数 O(1) オーダーに抑える新しいプロトコルが注目されています。しかし、これまでに提案された定数空間オーバーヘッドのプロトコルは、時間オーバーヘッドの面で依然として課題を抱えており、たとえば、符号化レートが高い量子低密度パリティ検査(quantum low-density parity-check; QLDPC)符号を用いた既存の手法では多項式スケーリングの時間オーバーヘッドが必要でした。また、より近年に我々が提案した連接量子ハミング符号を用いた定数空間オーバーヘッドプロトコルでも、準対数多項式的なスケーリングの時間オーバーヘッドが避けられませんでした。 これに対し我々の最新の研究では、符号化レートが高いQLDPC符号と連接Steane符号を組み合わせたハイブリッドなプロトコルを構築し、さらに復号などに必要な古典計算時間も明示的に考慮したうえで解析することで、定数空間オーバーヘッドと対数多項式時間オーバーヘッドを同時に達成できることを示しました。この成果は、QLDPC符号を用いたアプローチにおいても、連接量子ハミング符号を用いたアプローチと同様に、物理量子ビット数の増加を抑えながら、実用上無視できる程度の遅延でFTQCを実現できることを示しています。今後のFTQC実現に向けて、実験系の特性に応じてこうした2つのアプローチを包括的に比較検討することが重要になると予想されます。 このトークでご紹介する成果は以下の論文を元にしています。 https://arxiv.org/abs/2411.03683
本セミナーシリーズは量子AIやその周辺分野に関する最近の研究内容などを共有するために企画した、オープンなセミナーです。
皆さまのご参加をお待ちしています。